心の安息を与えてくれるフランス製のゴルフ

シトロエンZX CLUB

ジャン氏が親のアシグルマの車検切れを口実に選んだのはシトロエンのニュージェネレーションZXだ。いや、選んだという表現は適切ではない。お目当てのクルマが売れてしまい、クルマ屋に代わりにこれはどうだい?とたまたま勧められたのがZXだったのだ。

お目当てのクルマを取り逃がしたジャン氏の落胆は殊の外大きかったが、ZXもなかなかに良いクルマである。現車はZXとしては初期型にあたる1,6のクラブ。色はブラック、シトロエンのカタログではフランス語でノアールと記してある。ZXでは比較的珍しい色だ。サービスとしてBX GTI用のアルミホイールが付いていた。面白いことにこのアレンジは、つい先日同じZXクラブを購入したPACO氏と全く同一だ。
当時、シトロエンがゴルフを徹底的に研究し、開発したのがZXだという。全体のシルエットもどこかしら似ている。ゴルフを参考にして最も劇的に改善されたのはボデイのしっかり感だと思う。まるで段ボール紙で出来ているかのようなペナペナのBXと比べると同じメーカーのクルマとは思えない。たえずボデイのどこかがきしんでいたBXから見れば、ZXはまさにフランス人の作ったゴルフである。

それにしても、きしみ音を嫌うあまり、ダッシュボードの物入れを無くしてしまったのは全くシトロエンらしくない。助手席前の広大なスペースは大きな樹脂の「むく」に過ぎない。(さすがに後期型は薄い車検証入れが追加された)豊富な物入れは使い勝手の良いBXの長所のひとつだったのに。

内装のデザインテイストは同時期のAX後期、エグザンテイアと良く似ている。

早速、試乗をしてみた。いろいろなシトロエンに慣れ親しんでいるせいか全く違和感がない。ああ、なんて馴染むんだろう。1.6なのでパワーは多くないが軽快感はあって運転も楽しめそうだ。BX以前のシトロエンに感じる、尻の下がかゆくなるような怪しいジャンキーさ、いつ壊れるかわからないスリリングな感じ(それがいいという人もいるが)もない。いいじゃない、これ。ということでジャン氏はお買いあげになった。めでたしめでたし…かはまだこれからである。

ではジャン氏が涙を飲んで断念した、初めのお目当てのクルマとは?