少しは知性的っぽく見えるでしょうか?インテリジェントサーブ。

1989 SAAB90016i

いつかは手に入れたいクルマのひとつとして、サーブ96は外せない。5、60年代のラリーシーンで大活躍したスウエーデン製の小さなスポーツサルーンである。

そして表題のサーブ900は80年代を生きる正統なるサーブ96の後継者だ。その特異なボンネットの開き方、センターコンソールにしつらえたキーシリンダーなど、サーブ96を彷佛させるディテールがいたく私の心をくすぐるのだ。気が付いたら私は激安サーブのキーを握ってにんまりとしていた。嗚呼。


これもサーブ96時代の話だ。エステート版のサーブ95のリアシートを倒して2人の乗員(大抵は端正な北欧人のカップルだが)がベッドよろしくクルマの中で安楽そうに寝ている広報写真を見かける。その伝統は900にも受け継がれていて、普通のサルーンなのにトランクスルーになっていて長尺物がラクラク入る。サーブの大きな美点は受け継がれているのだ。

サーブ900は正直言ってスタイリッシュとは言いがたい。なんでこんなデザインをしてるかなあと時々あきれる事がある。
真横から眺めると妙に細長い印象を受ける。思わず、ウナギの寝床という言葉を連想する。
そもそもこのクルマはサーブ99のフロントセクションを思いっきり引き伸ばした上に、前後に分厚いバンパーを装着して90年代まで延命させたという成り立ちを持っている。ヘンにつぎはぎしたように見えるのも仕方のない所だろう。
その上、全長に比べてホイールベースがやけに短い。真横から見たプロポーションは水陸両用者アンフィンカー(知ってる?)を連想させる格好悪さだ。
ついでに、正面から見ると、やたらと腰高でやけに幅の狭いクルマに見える。このディメンションは90年代を生きるクルマではないでしょうと突っ込みたくなる。
フロントグラスの立ち加減も時代を逸脱している。どう見ても空力は悪そうだ。(ところが結構空力は良いらしい。あなどれないなあ)
では、お前はこのクルマが嫌いなのかと問われるとそうではない所が我ながら不思議なんだな。

実を言うとなんともいえない愛着を感じているのだ。クルマから降りる度に見とれてしまい、クルマの回りをいつまでもウロウロと歩き回っている私。

ああ、格好わるいのはサーブではなく他でもない私であった。

サーブ900というとすぐにターボ付きを連想するが、このクルマはノンターボの16iというグレードだ。別にターボなんかいらんわいと思っていたが、乗って見るとこれがまた遅い。思い切りアクセルを踏んでみても、ぐももも〜と鈍〜い発進をするばかり。まあ、車速が乗れば普通に走るんでいいや、別に。
16iを買って良かったなあと思うのはメッキでぴかぴかのホイールキャップが付いてきた事だ。猫も杓子もアルミホイールの時代なんでこれはイカすぞ、なんか古いクルマっぽくて。みんなもメッキのキャップをつけよう。

サーブ車は造りが良いというイメージを持っていたが、確かにボディの立て付けは良好だ。12年落ちの激安中古車なのに、バムッといかにも造りの良さそうな音を立ててドアが閉まる。

この音を聞く度に私はとても満ち足りた気持ちになる。あとは暖かい風しか出ないエアコンが一時の気まぐれである事を願うばかりだ。

エアコンの利き度判定
※なし(なんかぬるい温風が…)          注 ※5つで満点

続いてさらばサーブ900の巻だ。こうご期待。