1980 PEUGEOT504
アイボリーのボデイにブラウンモケットのシートの元愛車の写真です。
渋くていい雰囲気だね。
ドライブ途中、ESSOのスタンドでチャールズブロンソン似の店員と談笑する筆者(嘘)。うーん、マンダム。 ある日の事、ジュリアスーパーを買った業者から電話がきた。今、プジョー504を売りたいというお客さんがきているけど、私に買いませんかという。
値段を聞くと非常にリーズナブル(確かひとけた)だったのでほとんど即決で決めてしまった。
現車を見るとアイボリーの内装、ベージュのモケットの内張りで、そこそこ汚れてはいるが、磨けばなんとかなりそうなコンデイションだった。
パワステオイルが入ってないのでハンドルが重いが、補充すれば心配いらないとオーナーは話していた。
私は早速、現金と引き替えにクルマを引き取った。
帰りの道すがら、西武自動車のデイーラーがあったのでそこでパワステオイルを補充する。しかし、オイルは地面にだだ漏れして100メートルともたない。うひゃー、なんか話と違うぞお。
重たいデイーゼルエンジンなのでパワステが壊れているとハンドルがメチャ重い。
直す金なんて無いしなあと、重いハンドルを握って憂鬱になっていると、何やらクーラント臭い。
メーターを見ると水温がみるみる上がっているではないか。どひゃー、ここ、これは…
ラジエターのアッパーホースが外れてそこからクーラントが漏っていたようだ。ガソリンスタンドでホースを締め直すが、圧が高いのでもたないようだ。300メートルも持たずにまた水を吹き出してしまう。
ということで家までの道のり、オーバーヒートで白煙を吹くクルマを数百メートルごとに止めて、クーラントを補充しながら帰ったのである。我ながらムチャだなあ。
今改めて見るとシンプルなダッシュボード。ステアリングは古くなると樹脂が芯から離脱してグジュグジュになると言われたものだ。そんなハンドル握りたくないよなあ。 端正で個性的なリアエンドが素晴らしい。この尻下がりこそピニンファリーナの真骨頂。
504は20年以上生産されたがスタイルは何も変更されなかった。同じピニンデザインの410ブルや130セドリックがユーザーの不評に右往左往したのとは全く対照的である。
そんなこんなで修理する金もなかったので、504はすぐ手放さざるをえなかった。
しかしそんな短い間でも504は魅力的な面を見せてくれた。まず特筆すべきは優れた乗り心地である。ふんわり柔らかでそれでいて腰くだけでない、あのフィーリングはまさにフランス車の面目躍如、私が乗ったクルマの中で、最も乗り心地の良いクルマはプジョー504かもしれないと今でも思う程である。
そしてスタイリング。いわゆる、70年代のヨーロピアンサルーンの典型的なデザインなのだが、適度な節度を持った、飾り立てることのないたたずまいが実に好ましいのである。
写真で見ると当時の日本車とそう変わらない姿形に思えるが、現物を見るとさにあらず。あの大胆な面構成には、日本人には到底作れない立体感と存在感があるのだ。
インテリアも魅力的だった。濃いベージュのモケットシートは見かけは質素だが(またその質素さが魅力なのだが)座面が柔らかく、降りたくなくなる程の心地よさがあった。
思うに最近のフランス車はこういった最良の面が、とんと見られなくなった気がする。代わりに信頼性は圧倒的に上がったが、異文化に触れているという喜びは少ない。グローバル化たるゆえんなのだろう。
という事で走行距離の少ない極上のプジョー504があったら実は今でも欲しいのである。で、それを無造作にアシに使いたい。
さりげなく使う事がこれほどイカス(死語)クルマはそうはあるまいと今でも思っているのだ。