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私がほんの3ヶ月だけ所有していた1980年式シトロエンGSAパラス。1220CCの左ハンドル仕様だ。あらためて見るとこのカプセルシェイプがなんともいい味を出している。 GSに詳しいヒトならGSAなのにドアサッシが黒塗りでなくてステンレスなのがおかしいと指摘するかもしれない。 |
松本在住のY氏という、その筋では有名な好事家の所へ友人が買うことになる格安のアルファロメオ・アルフェッタを見に行った時のことだ。 シトロエンGSの売り物もありますけど見ますかと尋ねられ、思わず飛びついてしまった。 当時、私はシトロエン2CVをアシにしていて、いつかはハイドロニューマテックのGSやCXも狙ってやろうと思ってたので、まさに猫にまたたび状態である。 現車は5万キロ前後走行でベージュの外装に薄い茶のモケットシート。なんともいい雰囲気で一発で気に入ってしまった。 見る限り錆も出てないし、あのボビンメーターも変態極まりなくて何とも嬉しい。 試乗して驚いたのはとにかく、乗り心地に高級感がある事だ。元来こいつは1200ccの大衆車、いわばカローラ、サニーの筈である。なのに乗り心地に安っぽさが微塵もないのはどうした事だろう。 そして、ルーミーで広い室内にもかかわらず取り回しの楽な絶妙なボデイサイズ。ジャストサイズであるとしか言いようがない。 それにしても、ハイドロの乗り心地と空冷フラットエンジンという、組み合わせのなんと特異な事だろう! 空冷特有のサウンドと2CVを思わせるギアノイズを聞きながらハイドロの乗り心地に身をゆだねられるのはGSをおいて他にはない。 GSに乗ってしみじみ思うのは、このクルマはまさに2CVの正常進化版であるという事だ。2CVのネガテイブな部分をつぶして長所だけを残し、70年代に対応するファミリーサルーンを作り上げたらGSになった。そんな感じである。 勿論、それ以降のBXやエグザンテイアもまごうことなきシトロエンではあるが2CVとの関連性を感じることはない。 GSこそ、真のリアルシトロエンであると揶揄する熱狂的なファンが多いのも分かる気がする。 このクルマはアシとして大活躍することになった。2CVも所有していたがつい居心地の良いGSのキーに手が伸びてしまうのだ。 しかし、これは整備も完全でない激安のシトロエンだ。トラブルから逃れられる術はない。 購入当初からヒーターを使用すると室内がオイル臭くなり、これにはずいぶん悩まされた。ボロくて古いGSお決まりの症状である。 そしてオイル漏れ。駐車場に1週間置いておくとエンジンルーム下に緑の池ができた。 結局、修理する金もなかったので車検切れを機会にGSは知り合いの整備工場に売却することにした。ほんの数ヶ月のつき合いだったが忘れられない良い思い出のクルマとなった。 |
思うにこの頃は、面白そうな外車が激安で買えた良い時代だったのかもしれない。今、GSを買おうとしたって無いもんなあ。 それでもあの乗り味が忘れられなくて、再びGSを購入しようと思ったことも何度かある。今度こそしっかりと手をかけてやって、信頼できるアシとして長く愛用してやろうと考えていた。 しかし、このクルマを取り巻く環境は悪化の一途をたどっている。国内でGSの良い個体を見ることはホントに希になった。フレンチブルーミーテイングに行くとよくわかるが、新しいフランス車が増えたのと呼応してGSは激減している。海外においてもヒストリックカーとしての認知は受けていないGSの部品供給は悪化の一途をたどっているらしい。 例えばDSのようにクラシックとして認知されていれば、部品を供給する業者も出てきていくらでも生き延びる術はあるのだろうが。 |
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