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あれから20数年を経て遂に憧れのDSが私の元にやって来た。現車はフェンダーにオレンジ色のサイドマーカーの付くイタリア仕様だ。リアには正方形の古い型のミラノのナンバーが付いていた。イタリアはミラノに住むパオロ老医師が新車から24年間ずっと所有してきたワンオーナー車。90近い高齢になったのでもう乗らないということで手放した。老医師は主に家族と一緒に南仏の別荘に行く時にこのクルマを使用していたそうだ。幸福な家族を乗せ幾度となくアルプス越えをしてきたDS。なんと充実した過ごし方をしてきたクルマだろうか。
最高級グレードのパラスではあるが、機関については最もシンプルな仕様であるキャブレーター、マニュアル仕様だ。ラジオすら付いていない。ドットーレは25年間何もオリジナルを損なわなかった。色は薄いシャンパンゴールドメタ。恐らくBeige Tholonetだと思われる。この色は私の理想にかなり近いものだが今ではもうちょっと派手な金色もいいかなと思い初めている。屋根はホワイト。内装は茶のジャージー張りとオフホワイトのツートーン。
現車のコンデイションは決して極上ではないが不自然に手を加えることなく枯れたオリジナルテイを保っている。このまま枯れた風情で乗るか、レストアを施すかはこれからの楽しみである。
現車を見た時は屋根の内張りが垂れ下がっていた。そういやCXも全く同じだった。古いシトロエンしかも豪華仕様は必ずこうなってしまうらしい。仕方ないので張り替えてもらうことにする。
やっと納車されて走ってみるとどうもエンジンからタタタッという異音がする。タペット音のようだ。オイルをBPクラシックの15ー40という固めのものに換えてタペット調整をすると音が消えて調子が良くなった。ちょっと一安心。
運転して見るとマニュアルのせいかもしれないが意外とDSは普通のクルマに思えた。強烈なセルフセンタリングとボビンメーターを持つCXの方がよっぽど変なクルマだ。その乗り味は他のシトロエン、たとえば2CVなどと、どこか通ずる所がある。なんとも安らぐ気持ちの良いフィールだ。
しばらくすると、今度は走行中にアイドリングが不安定になってエンストする症状が現れる。キャブレーター等燃料系が原因らしいので現在調整を施している。ということで現代日本においてDSがアシになり得るか否かはもう少し様子を見ることになる。
マフラーは幸いにも新品が装着されていた。テールレンズも新品がショップで入手できたのでその内交換するつもりだ。イタリア仕様はトランクのエンブレムが左側に付くのだが幸い?にも現車は本国フランス仕様と同じく右側に装着されている。モデル末期になって輸出国ごとの意味のない差別化を省略したのだろう。