その3
青春のダルマセリカLT 小学校時代からの友人Pはダルマセリカで筆おろしをした。それが1600GTだったら誇らしくも語れようが、しょぼいことにそれは、セリカはセリカでも1600LTだったのだ。
ここで初代セリカを知らない若い世代の為に解説しょう。
未来の国からやってきたというキャッチフレーズと共に初代セリカは1970年デビュー。当初はクーペのみで和製ムスタングとも称されたLB(リフトバック)は73年の追加登場となる。
グレードはまず最上級車種が1600GT。あまりにも有名な名機2T−Gはこのクルマに搭載されて誕生したのだ。そしてGT以下はフルチョイスシステムと言って、外観、内装、エンジンを自由に組み合わせて選ぶことができるのが売りであった。表題のLTというのは外観のパッケージ名のひとつで、下から数えて2番目にしょぼいものだ。カリーナあたりと共用のメッキの角形ミラー、細いバイアスタイヤ(当時はこれを糸のように細いということで糸タイヤと呼んでいた)そしてささやかなエアスクープを特徴とした。勿論スポーテイなGTストライプなどは付く筈もない。
余談だが最下級のグレードはETといって、いわばセリカのスタンダードなのだが一度も現車を見たことがない。そもそも誰がセリカのスタンダードを買うというのだ?まあ、おやじになった現在の目から見れば、クリーンで好ましいなどと枯れたコメントも吐けるが、血気盛んな若い頃はそうもいかず、太めのタイヤで小僧仕様にモデイファイしたLT、STを多く見掛けたものだ。
P内君のセリカもほどなく糸タイヤに鉄ホイルの組み合わせから、エンケイデイッシュと175−70タイヤ(この70というのが泣ける。ダンロップスポーツか何かか?)に履き替え、片側1車線の林道をホーンを鳴らしながら時速100キロで激走する、いっぱしのOH!MY街道レーサーに成長したのだ。
この写真はエンケイデイッシュからトヨタ純正のGTホイールに履き替えた頃のもの。
このホイールは前出の51年式LBに乗っていた友人から譲り受けたそうだ。今見ると車高がノーマルのままで、ミラーすらも平型から換えていないのがどうにも異様に映る。これはP内君の美学故からなのか、単に金がなかっただけなのか、真実は遠い時の彼方へ過ぎ去ってしまった。まあ電話して聞けば済む話なのだが。
燃料給油口が左Cピラーにあるのが48年式の特徴。
初期型はその頃のトヨタ車の多くがそうだったように、リアナンバープレート裏に給油口がある。今時のスタンドのあんちゃんは必ず迷う所だろう。テールレンズも赤一色からオレンジと白が分かれて3分割になった。ショルダーの角張った70タイヤが当時を思い出させる。写真ではわからないが、P内君が激しく峠を攻めたおかげで後輪の車軸がずれているらしい。
この写真を見るとエンジンルームはイエローコード以外はノーマルのようだ。2Tエンジン特有の水色のエアクリーナーが懐かしい。これのツインキャブ版が2T−Bと呼ばれた。
納車されてすぐの頃、私がP内君の駐車場に潜入して撮影したカット。1980年と記録にある。この頃は完全ノーマルで程度も良かったようだ。今ならさしずめコンクールコンデイションと呼ばれるだろう。それにしても今時、軽トラックも履かないようなか細ーいタイヤだ。