|
|
 |
|
|
|
|
|
人間とはえてして、つじつまの合わない、非合理的な行いをするものである。あの暑い日のpaco 氏の行動はまさにそれだった。 氏はシトロエンＺＸを車検に出し、代車で借りたエグザンテイアで現れた。その目はトローンとして、いかにも危なっかしい。どうやら、ハイドロニューマテイックの乗り心地に心酔した様子だ。 「シトローエンいいっすよお」。paco氏はシトロエンを指す時、二玄社風に「シトローエン」と発音する。変人に見られることを微塵も厭わない、氏のこだわりである。 クルマ欲しい病が末期に達していた氏がシトロエンを手を出すであろう事は確実に思えたのだが。 |
 |
| 現車は89年式190の2,６。ボデイサイドにサッコプレートと呼ばれるプロテクターが付いた中期型である。そういえば、デザイナーのブルーノ・サッコはイタリア人だ。またpaco氏につまらない自慢のネタを与えてしまったようである。 |
 |
| リアにはAMG製の派手なスポイラーが付く。このファットなホイールはＳＬＫの純正品。こんなに太いホイールを履いても乗り心地はほとんど犠牲になっていなかった。 |
 |
|
乗り心地を重視するPACO氏は純正アルミを見繕って、早速サイズダウンを計る。こだわりの氏は、タイヤはミシュランをご指名である。以下、カーショップでの会話。 店員 「お車は何ですか？」 こだわりの氏は絶対ベンツとは呼ばないのであった。この後も、ミシュランのロゴパターンが気に入らないと難癖を付けるなど、善良な店員を困惑させまくる氏であった。 |
 |
|
少しだけ試乗してみた。ステアリングはメルセデスの文法通り大径のものが付く。ドアの立て付けは極めてしっかりしていて、さすがコストダウンする前のメールツェデスは違うなとひとしきり唸る。 そして絶品なエンジン。よくＢＭＷのストレート６をシルキー６と呼ぶが、私はこの称号を、ベンツの６気筒にこそ与えたい。この上なく上品かつスムーズな回転、過充分なパワーは賞賛されて然るべき物だろう。 このクルマに身をゆだねていると、イイ物に乗っているという得も言われぬ満足感に浸る事ができる。そう、ノーズのスリーポインテッドスターを頂きながら、人生の勝利者気分を味わう事が出来るのだ。 70万ほどの中古車でそれができるんだから、190とは全くvalue for moneyなクルマである。（小林彰太郎的言い回し） |