突撃!輸入中古車探検隊
真人間への免罪符 BMWが欲しいの巻

登場人物紹介 

ハカセ

年齢不詳。クルマの本とエッチな本しか買ったことのないダメな人

少年

年齢不詳。毎週カーセンサーを買って激安車を物色するダメな人


新宿副都心を見おろすビルの一角、輸入中古車探偵事務所にて(実は甲州街道沿いのセブンイレブン店内)

 ハカセー!ハカセ!

 まったく朝っぱらから騒がしいな。朝食のスクランブルエッグくらいゆっくり食べさせてくれたまえ。ははあ、さては君が毎週愛読しているカーセンサー誌で、ワンオーナー極上の初代オペルマンタでも発見したのだろう。

 違いますよ。ハカセ。私が見つけたのは大変に希少なアルファスッドのしかもTI!店の宣伝文句では錆び、少ないと書いてあります。あまりの錆びやすさにみんな土に還ったと噂されるアルファスッドの未再生原型車。これはもしかして大変な掘り出し物かも…と、そんな事を言いにきたんじゃないんです!

 どうしたのだね?今回は特に語気が荒いようだが。

 ハカセ、思い返せば私たちの突撃外車中古車隊も、随分と長い間、活動してきましたよね。

 長い間も何も、この連載は今日が第1回目なんだがなあ。でも不思議とかなり昔からやっているような気がするのはなぜなんだろう?

 で、考えたんですが、私、いい加減、ジャンキーなカーウオッチャーは卒業して、まっとうな人間に戻ろうかと思うんです。

 やめたら自動車雑誌の編集者にでもなるのかね?

 どう切り返してよいかわからないのでノーコメントです。と、いうことでまっとうな人間になるにはまず形からと思いまして、真人間が乗るに相応しい堅実なドイツ車を探してきました。

 なんだか訳のわからない論理で全く説得力がないと思うが。しかし長年ヘロヘロのイタフラ車に乗り続けた君には、確かに良い刺激になるだろうな。で、そのドイツ車とは一体何かね?もしかしてグラース1600GTかな?あの端正なスタイルは私も大好きだぞ。あっ、もしやデイーラーもののNSUゾンデルクラッセではあるまいな?

  堅実な人間がそんなものに乗るわけないじゃないですか。後は見てのお楽しみです。さあ、早速出かけましょう。

 道すがらにマックのドライブスルーがあったら、エッグマフィンを買うのを忘れないでくれたまえ。

 そこまで真似るとモロにネタばれしちゃうと思うんですが…

今でも頻繁に姿を見かけるBMW E30。サンプル車はマイナーチェンジ後の90年式の320IAだ。スチールホイルに付いてるホイールキャップはとても安っぽいので、せめてこの純正アルミが装着されたクルマを選びたい。装着率は結構高い。

六本木通りの高級外車デイーラーにて(実は国道沿いの整備工場券中古車屋)

 おお、これは珍しい。セアト・イビーザではないか。思いっきり没個性な2ボックススタイルの横っ腹にでかでかと書かれたポルシェのロゴが涙を誘うぞ。

 ハカセ、それじゃありません。こっちです。

 おお、何の変哲もない、前の前のBMW3シリーズではないか。きれいなライトブルーだな。

 どうも、オークションで仕入れてきました。

 こちらは店長さんです。このBMWのセールスポイントをお伺いしたいのですが。

 特にありません。強いてあげればこのブルーメタは結構珍しい色です。

 …この盛り上がりの少なさは、いかにも近所の中古車屋という感じで好感が持てますね。

 このE30はバブル華やかな頃、六本木カローラと言われるくらいに大ヒットして、BMWを一部マニアのクルマからベンツと並ぶ高級外車として日本中に浸透させた名車だな。今見るとスクウエアなボデイスタイルといかにもセダン然と立ち上がったフロントピラーが好ましいではないか。思えばこのクルマが現役だった頃は私もまだ若かったなあ…

 ハカセ、遠くを見つめるような目をしないで下さいよ。このクルマは90年式なので今年で11年落ちなんですが、内外装の色つやは新車並みとは言わないまでもまだまだ充分イケますよ。ただ惜しむらくは直射日光のせいでダッシュボードにヒビわれが起きています。BMWでは比較的珍しい事だそうですが…

 同じ90年式でも某フランス車と比べると実にしっかりしているではないか。これで平均的なコンデイションとはさすがドイツ車だ。どれ、ひとつドアを開け閉めしてみよう。バムッ…うむ、ベンツのW123程ではないが悪くはないな。

 私の友人でドアの開閉音でクルマを選ぶ人がいるくらいですから。

インテリアは基本的に黒とグレーだけでやや色気に欠けるきらいがある。しかし、全てドライバーの方向にオフセットされたインストルメントパネルのデザイン、適度にタイトなポジションなど、スポーツセダンたるBMWの面目躍如といったところだ。

メルセデス程ではないが質感もしっかりしていて、ドイツのクルマに乗っていると実感できる。

純正のスポーツステアリングを装着している。

サンプル車はライトブルーのボデイに合わせて内装も珍しいブルーグレーだ。

 よろしかったらエンジンをかけてみて下さい。

 それではお言葉に甘えて…ブロロロ…一発でかかりました。野太い、いかにもBMWらしい音ですね。アクセルの踏みごたえが渋いなあ。当時、乗った新車もこんな感じでした。
次はエンジンルームを見てみましょう。おおっ!これは綺麗だ!手を入れてなくてこの状態とは、もしかしてこの個体は希にみる掘り出し物かも…

 仕入れてからウチの方で掃除しました。

 …この盛り上がりの少なさは、いかにも近所の中古車屋という感じで好感が持てますね。
それにしても、新車の頃はハイソなヤンエグしか買えなかったベンベが、こんなリーズナブルな値段で買えるなんて、我々庶民にはなんとも嬉しい時代になってきましたね。

 恥ずかしい死語をあまり連発しないでくれたまえ。しかしBMWもご多分に漏れず、モデルチェンジのたびにボデイサイズを拡大しているし、今やこのサイズのFRモデルは貴重だな。
実用上におけるE30の欠点は後席が狭い事だろう。4ドアセダンとしてはちょっと許し難い程、狭いと思うんですが。

 広告に載せたら結構問い合わせ多いんですよ、E30。

 うむ。激安の割にはそんなにビンボ臭く見えないし、ちょっクルマ好きに訴えかけるものがあるな。まあタイミングベルトやらオートマやらエアコンやらマウントやら電装品とかに気を配る必要はあるだろうが。
よし、ひとつわたしも E30を入手して、ヤンエグを気取って女子大生をハントするかな。

 ハカセの言い回しもなかなか恥ずかしいものがありますね。ではネタも尽きたようなのでまた来月。
マイナーチェンジを受けてテールレンズが拡大された。当時はカローラのように安っぽいデザインと言われたが、今ではその比較すべきカローラもいなくなったのでまあ、いいか。