獅子への忠誠

1997 PEUGEOT406 SV

この際、秘めたる私の想いを告白する事にしよう。実はずっと前から、プジョーの事を、心憎からず思っていた。

しかし、ベルフォールの獅子に対する愛を、私は屈折した形でしか表現できなかった。

出会いに恵まれなかったのだろうか?私が入手するプジョーは、いつもチビた消しゴムのような、賞味切れのものばかりだった。故に、私にとってプジョーはつまみ食いの対象ではないかと人に疑われた事もあった。

しかしそんな偽りの日々も終わりを告げた。今日、私は獅子の刻印の入ったキーを握りしめている。心から獅子に忠誠を誓った、一点の曇りもない晴れ晴れとした表情だ。…っていつまで続くのかな?(自分で自分が信用できない)


え?また同じ406?と思われた方も多いでしょう。

あの青い406は98年式の2、0sedan というグレード。そして、このシルバーのクルマは97年式のSVと言います。両車は外見は全く変わりませんが、装備などに細かい相違点が見られます。実はその最大の変更点はAT にあるのです。97年式まではヨーロッパ車に多く見られるZF製のミッションを使用していたのですが、98年式からはプジョー自製のものに変更されたのです。

乗り較べてみますと、ZF製はAT特有のパワーロスがあり、古さを感じさせます。一方、プジョー自製のATは確かにスムーズで、プジョー特有の柔らかい乗り心地がより強調されています。

しかし新しいものには何かとトラブルが付き物です。私の98年式も原因不明のシフトショックに悩まされました。それは同乗者が不安に思う程、大きなショックを伴い多発したのです。エンジンルーム内のATのコンピューターに風の通り道を造って熱対策をしたら、若干症状は納まりました。しかし、寒い季節でこの始末では夏はきっと乗れたもんではないでしょう。根本的な解決策はコンピューターの交換しかありません。しかし、それでも完治するかどうか?

大事に至る前に私は乗り換えを決意しました。勿論、M自動車のご厚意により、出費を大幅に抑える事ができたのが一番の理由ですが。大変感謝しております。

私が406が欲しくなった最大の理由は、406が美しいデザインを保った「最後のコンサバなプジョー」だからです。

先日の自動車ショーで406の後継車である407プロトタイプが発表されました。そのデザインは最近のプジョーの傾向に従った、極めてアグレッシブなものでした。

古くは404、204、304、そして504、505へと続いた、ピニンファリーナ調のオーソドックスで均整の取れたプジョーのベルリンは406で最後となるかもしれません。

そんな郷愁が、私に実印を押させたと言ったら言い過ぎでしょうか。

発売当時のプジョー406は4気筒のSTとSVの2グレードが存在しました。

現車は上級車種のSVでアルミホイール、フォグランプが付くのがSTとの外観上での相違点です。それ以外の4輪ディスク、エアコン、パワステなど実用上必要な装備において違いはありません。

ちょうど同クラスのシトロエン・エグザンティアのSXとVS_Xと同じような関係だと言えるでしょう。

内装はボディ色がシルバーの場合、グレーが指定されます。

上級グレードのSVではダッシュボードとドア内張りにウッド調の飾り板が付きます。前の98年式の写真と比較して下さい。

私はプジョーに忠誠を誓った証として、獅子のキーホルダーを買い求める事にしました。早速、最寄りのディーラー、ブルーライオンに駆けつけ、一番安いキーホルダーを注文しました。

写真で見えるライオンのぬいぐるみ状のものがそれです。800円也。なかなか可愛い。

フランス車の静粛性は確実に向上していると思います。

シトロエン・エグザンティアの静粛性はBXより向上していたし、この406の静粛性は確実にエグザンティアを上回っています。

しかしながら、ドイツ車や日本車の域にはまだまだ達していません。フランス車がその域に達した時、日本車たちは更に上のレベルに到達している事でしょう。

エンジンルームのバルクヘッド部を覆う黒い樹脂のカバーは、びっくりする程、ペナペナした質感です。こういう所はやはりフランス車だなあと感心します。ドイツ車ではあり得ない事です。

獅子に忠誠を誓うという事とは、樹脂に忠誠を誓うのと同じ意味を持つのでないかと思う今日この頃です。

エアコンの利き度数
※※※(まだ春なのでよくわからないが)          ※5つで満点

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